「聖書」とは何か

おおいずみ野の花法律事務所の名前は、聖書の一節を参考にしました。

「聖書」とはキリスト教の基本となる文書であり、ユダヤ教の正典でもある「旧約聖書」(プロテスタント教会の数え方では39巻)と、キリスト教独自の「新約聖書」(27巻)に分かれます。

新約聖書は、約2000年前に、住んでいる場所も所属する共同体も依って立つ考え方も異なる様々な著者がギリシャ語で執筆した文書を、集めて編集したものです。印刷術のなかった古代・中世のこと、聖書の内容は写本によって伝達されていきました。2000年前に成立したオリジナルは現存しておらず、微妙に内容の異なる複数の写本が現代に伝えられています。そして、複数の写本を照らし合わせてテキストが確定され、そのギリシャ語のテキストを翻訳したものが日本語の聖書として出版されています。

聖書の日本語訳も、幕末以来の伝統があります。今回私が引用したのは、日本聖書協会が発行した「新共同訳」です。なお、新共同訳には訳者名が明記されていませんが、岩波書店から出ている新約聖書翻訳委員会訳は、文書ごとに訳者名が表示されています。田川建三訳など個人訳の聖書もあります。

キリスト教の世界では、聖書は「神の言葉」と言われます。しかし聖書は、古代の多様な著者、編集者が関与して成立した「人間の言葉」でもあり、多くの人間が書き継いだ写本によって現代に伝えられ、翻訳者の努力によってそれぞれの母語に訳され、私たちの手元に届けられたのです。

この記事を書いた人

伊藤 朝日太郎